婚活のイマを知るFUTARI START GUIDE

新型コロナウィルス感染症の影響を受けて、オンラインでの会話が日常になりつつある今、結婚や婚活においても意識や行動の変化が生じているのではないでしょうか?そこで、リクルートブライダル総研所長の落合歩さんに、婚活の現状について伺いました。



新型コロナウイルス感染症が社会を大きく変え、これまでに体験したことのない状況を経験する中で、新たな価値観や行動様式も生まれてきました。その中で、「どのような人生を過ごすのか」を改めて自問自答した人も多いことではないでしょうか。「結婚をするのか・しないのか」は独身の方にとって、今後の人生に少なからず影響があるため、「誰と過ごしていくのか」という視点で人生を見つめ直した人も多かったことでしょう。そこで、「結婚相手を探すこと=婚活」に焦点を当て、その現状と新型コロナウイルス感染症の影響をリクルートブライダル総研の「婚活実態調査2020」をもとに分析していきたいと思います。そして、そこから今後の婚活や結婚を考えるヒントを見つけていただければと思います。

合理性を軸に活性化する婚活サービス

2019年に結婚した人のうち、婚活サービスを通じて結婚した人の割合は過去最高の13.0%に達しました。これは年間の結婚した人のうち、約8人に1人以上の方が婚活サービスを通じて結婚したことになり、調査開始以降、過去最高の数値となっています。浸透スピードが早いことも特徴的で、2013年以降は一気に上昇し、ここ数年の定着が目覚ましいです。2000年には1.4%だった状況と比べると、約20年で市場が大きく広がり、結婚に向けた有効な手段になったと言えるでしょう(図1)。また、独身者の利用についても利用経験率は増加傾向で、20代~40代の恋愛もしくは結婚意向がある恋人のいない独身者において、婚活サービスの利用経験割合は25.5%と、調査開始以降最高になっています(図2)。特にネット系婚活サービス利用経験割合は、2016年の9.8%から2019年は19.1%と伸長し、全体を大きく底上げしています。
それらの背景にあるのは婚活サービスの合理性、効率性だと考えます。例えば、先ほどみた2019年に結婚した人でみると、婚活サービスを利用した方のうち、42.8%が結婚に至っています。つまり利用すれば4割以上が結婚できているということになり、これは、他の手段(例えば、友人に紹介を依頼した場合の成婚率は26.7%、合コンは8.7%)と比較して非常に効率が良いと言えます。結婚するために出会うといった目的も明確で、相手に求める条件を意識しながら相互に相性の良さを判断するため、条件をすり合わせる期間が短くすみます。また、自身の所属するコミュニティとは外れているので、知り合いの視線を気にするといった煩わしさも比較的少ないという特徴もあります。まさに、コミュニティ内で周囲に配慮をし、合理性を重視する世代にとっては、交際相手を探すのに最適な手法になっているのです。

新型コロナウイルス感染症拡大がもたらした婚活サービスへの影響

このように伸長する婚活サービスではありますが、今回の新型コロナウイルス感染症拡大がどのような影響を与えたのか、調査からその傾向をみていきたいと思います。
緊急事態宣言が発出された4~5月の利用状況をみると、それまで婚活サービスを利用していた恋愛・結婚意向のある独身者の約7割が、そのまま継続利用していたことがわかりました。その期間に利用を中止した人は約2割で、婚活サービスへの新型コロナウイルス感染症拡大の影響は限定的だったと言えます。その背景には、不安定な世の中で精神的な支えとなる‘絶対的な存在’や‘絶対的な味方’を求めているのではないでしょうか。実際に、以前から恋愛・結婚意向のある独身者(※1)の約4割は結婚への意向が高まっているのが、特徴的です。さらに、意向が高まった人は、自粛期間中に「人と過ごすことのありがたみ」や「将来を考える機会」が増えたと答えた割合が比較的高く、誰とどのように過ごしたいかといった「自分の理想」と向き合ったことの現れと言えます。今後も婚活サービスを活用しながら、精神的な支えとなる‘絶対的な誰か’を求めた活動は活性化していくのではないでしょうか。
(※1:恋愛もしくは結婚意向のある婚活サービス非利用独身者および2020年3-5月間の婚活サービス利用実績のある独身者)。

また、自宅で過ごす時間が増えたことにより結婚相手に求める条件の変化もみえてきました。新型コロナウイルス感染症の流行によって、重視するようになった結婚相手に求める条件をみると、「経済的安定」に加え、「長時間一緒にいても苦にならない」「個人の時間を尊重してくれること」など、「パートナーとの距離感」を重視していることが分かります。これは、これまでにないほど長い時間を自宅で過ごす人が多かった中で、結婚後の生活を想像し、改めて結婚相手への条件を考える機会になっていたことが影響していると考えられます。また、新しい生活様式の中で、どんな相手となら二人きりで長い時間を過ごしてもストレスを感じずに楽しく穏やかに暮らせるのか、そして、お互いの時間を尊重しながら生活できるのかを考え、確認した機会だったとも言えます。
もう一つ、婚活サービスにおける新たな動きもみていきたいと思います。婚活サービスにおけるオンラインの可能性です。現状、恋愛・結婚意向のある独身者(※1)の約3人に1人は「オンライン婚活であれば、新型コロナウイルス感染症流行中でも活動できる」と答えています。また、オンラインデートに対する意識において、「費用を抑えながら婚活ができる(45.5%)」「周囲の目線を気にせず会える(35.8%)」「リアルで会うより時間が自由(35.6%)」など、新たな兆しも現れてきました。以前は、婚活サービスの利用には「恥ずかしい」「高い」といった阻害ポイントがありましたが、オンラインを効果的に活用することによってそれらが解消されていく可能性が広がっていることも注目したい点です。実際に、婚活サービスの事業者がオンラインデート機能などを取り入れ、既に活用されており、今後、定着していく可能性は高いと思います。

このように、新型コロナウイルス感染症の拡大は、結婚観や婚活サービスの活用に変化をもたらしています。元々、結婚意欲のある人たちにとって、新たな出会いの手法として広がってきた婚活サービスが、オンラインとリアルのサービス双方で相乗効果を生みながら、時代に合わせたカタチで浸透していく。もちろん、その根底には「人生を誰とどのように過ごすのか」といった本質的な視点がベースとなりますが、婚活サービスがさらに、有効な手法として進化していくと言えそうです。
もし、結婚したい気持ちを持っているならば、自分に合った婚活サービスを探し、利用してみることで、これまでのイメージとは違った視点で、結婚相手との出会いを捉えることができ、有意義な手法として実感するかもしれません。

落合 歩(おちあいあゆむ)/リクルートブライダル総研 所長
「恋愛・結婚調査」「結婚総合意識調査」など未婚者の動向から結婚、結婚式、夫婦関係に至るまで調査、研究、提言を行う。また、オリジナルツールの「人生ワゴン」を活用した「ライフデザイン講座」を開発・展開し、多くの若者に結婚、出産などを考えてもらう機会を提供。メディア取材、寄稿および講演多数。

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