データから見る「恋人がいる層」の特性と5つのキーワードFUTARI START GUIDE

恋愛を考える意味

 日本における結婚に向けたアプローチ方法は、時代とともに移り変わってきました。「家と家」から「個と個」に結婚の価値観が変わる中、結婚相手との出会い方も「お見合い結婚」から「恋愛結婚」へと主流が変化してきています。1960年代を境に恋愛結婚の割合が上回り、いまや恋愛結婚が約9割近くに達する状況です(「出生動向基本調査」国立社会保障・人口問題研究所)。これは言わば、誰かにお膳立てをしてもらうことを前提としているわけではなく、自分で結婚相手と出会い、見つけなければならないことを意味しています。もちろん、昨今では「婚活サービス」が浸透し、出会いのきっかけを創出できる仕組みもあるため、出会い方の選択肢は広がっていますが、「自分が選び・選ばれる」そして「関係を創っていく」という流れは変わりません。言い換えれば、もし結婚をしたいと思うのであれば、「恋愛」を考えることは重要であり、自分が納得できる結婚相手と巡り合う方法として「恋愛」を念頭に置いておかねばならない時代になったと言えます。

 そこで、恋人をつくるということを少し考えていきたいと思います。ここでは20代から40代の独身者2400名の調査(「恋愛・結婚調査2019(リクルートブライダル総研調べ)」をもとに「恋人がいる層」「恋人がいない層」を分け、それぞれの違いを導き、分析していく中で、「恋人がいる層」の特徴を明らかにしていきます。つまり、恋人がいる人が実行していること、考えていること、置かれている状況などを知り、恋人づくりのヒントにしていくということです。

5つのキーワードから紐解く恋人がいる人の特性

 深く分析を進めると、そこには5つのキーワードが見えてきます。

 1つめは「伝え上手、聞き上手」です。具体的に「どんな人の言うことにも耳を傾けられる」「人に自分の気持ちや考えを素直に話せる方である」といった項目は、「恋人がいない層」と比べそれぞれ約12ポイント、13ポイントの差が出ており(図1)、恋人がいる人の特徴になっています。恋愛は他者との人間関係づくりでもあり、いわゆるコミュニケーションでもあります。そのため、伝えない、あるいはあまり話を聞かないということでは関係が構築できません。また、一方的に話しすぎても、聞きすぎても、バランスが崩れます。あくまで伝えることと聞くことのバランスが取れる人、その中で相手のことを深く知り、自分を知ってもらい、関係を構築することが、恋人づくりに大きく関係しています。

 2つめは「友人」です。恋人がいる人はいない人に比べ、同性の友人数で1.6倍、異性の友人数で1.8倍多くなっています。友人が多いということは、先ほど見たコミュニケーション機会も多くなり、コミュニケーションスキルの上昇につながります。さらに、友人は出会いのきっかけを提供してくれることもあります。現在、恋人がいる人のうち約12%が友人を介して出会っており、友人の範囲を広げておくことで新たな出会いの機会を提供してくれる可能性も広がります。

 3つ目は「容姿と中身」です。現在、恋人に求める要素として「人柄の良さ」が79.7%と最も割合が高く、「容姿」は47.2%と比較的高くありません。外見重視と内面重視の選択でも多くは内面重視と答えます。しかし、ここで難しい問題があります。内面はなかなか見えづらいということです。ですので、内面を磨くことに加えて相手に分かりやすく伝わるもの、つまり「印象」を高めることも重要です。「印象」は瞬時にその人の評価につながりやすいもので、その為にも、比較的自身でコントロールできる「身だしなみ」を整えておくことが大切になります。実際に、「自分の身だしなみについて、周りの視線が気になる」割合や、「周りがどんな身だしなみなのか、つい気にしてしまう」割合は、恋人がいる層の方が約14ポイント高く(図2)、恋人がいることと関係があると言えます。

 4つめは、「許容範囲」です。つまり条件をいかに柔軟にできるかです。以前、別の調査(「恋愛・婚活・結婚調査2015」リクルートブライダル総研調べ)で「結婚している層」と「結婚していない層」の分析をした際に、同じ未婚時において結婚相手に求める条件の数に違いがありました。例えば女性でみると、「結婚していない層」の方が求める条件の数が1.2倍多かったという結果です。また、「恋人がいる層」と「いない層」の比較を見ると、「恋人がいる層」の方が「出会い方」について柔軟で、比較的こだわりが強くないという結果でした。このように、自身の許容範囲が狭すぎると対象者が現れにくくなり、結果としてパートナーをみつけにくくなります。そこで重要なのは、自身の中で「譲れない条件」と「あると嬉しい条件」を分けて考え、優先順位をつけておくことです。心構えとして「理想のパートナーだけを選び抜く」という考えから「少し理想とは離れていても考えをすり合わせながらやっていく」という考えも大切な視点です。

 そして最後の5つめは「行動」です。自由な恋愛において、恋人がいる人が共通で実行していることがあります。それは「伝える」ということです。自分の思いや考え、気持ちを何かしらの手段で届けています。その意思表明がないと交際にはならず、心の中で思っているだけでは伝わることはありません。言い換えれば「思考を巡らす」だけでは進むことはなく、「行動」して初めて進むのが恋愛だと言えるかもしれません。実際にデータを見ても、恋人がいる人はいない人に比べ、気になる人ができたら「話しかけようとする」「連絡先を聞く」などの割合が、それぞれ約18ポイント、13ポイント高く(図3)、「行動」することを念頭に置いていることが分かります。また、「決めたことは即実行する」という割合も約16ポイント高く(図4)、日常的に「行動」を心がけていると言えます。もちろん、いきなり意中の人に伝えるという「行動」はハードルが高いです。ですので「友人に恋人がほしいと言う」「身だしなみを整えるために洋服を買う」などどんな些細なことでもいいと思いますが、「行動」を念頭に置き、小さなことから始めてみることが重要だと思います。

時間を意識してみる

 以上5つが「恋人いる層」「恋人いない層」の分析から出てきたキーワードです。また、最後にもう一つ、「時間を意識する」ということも重要だと考えます。結婚までに交際した期間は全国平均で3.3年です(「ゼクシィ結婚トレンド調査2019調べ」)。仮に週1度デートをすると約170回程度になります。つまり、結婚するまでにかなりの回数会い、話し、相互理解を深める時間が必要です。もちろん、出会ってすぐ結婚を決める人もいるので全てではありませんが、ある程度すり合わせを行い、場合によっては家族ともコミュニケーションをし、結婚に向かうため、それなりの時間がかかります。

 一方、結婚した夫婦の年齢差は1.7歳差です(「人口動態統計」厚生労働省)。年の差カップルもいますが、多くは同年代で結婚していることが分かります。その上で、年代別の未婚者割合をみると、男性で20代前半は95.0%、30代前半は47.1%、40代前半で30.0%となります。一方で、女性は20代前半で91.4%、30代前半で34.6%、40代前半で19.3%です(「平成27年国勢調査」 総務省統計局)。年齢が上昇につれ未婚者の割合は低下します。つまり既婚者が増え、結婚対象者が少なくなっていきます。先ほど見たように同年代で結婚するとするならば、自分の年齢が上昇するにつれて対象者が少なくなるとも言えます。そして結婚に至るまでにはそれなりの時間を要します。それらを考慮すると、「いつか結婚したい」という思いがあるならば、「いつまでに」を意識し、行動をなるべく早くとった方がゴールに近づけると言えます。

 時代とともに結婚に向けたアプローチは変わり、自律的に結婚相手を見つける必要が出てきました。一方で、結婚する・しないも含め多様な選択肢が広がり、多様なカタチが認められてもいます。自身の将来を少し考えた上で、もし結婚という選択を希望するのであれば、「恋人がいる層」の特性を参考に、行動してみるのもいいのではないでしょうか。

落合 歩(おちあいあゆむ)/リクルートブライダル総研 所長
「恋愛・結婚調査」「結婚総合意識調査」など未婚者の動向から結婚、結婚式、夫婦関係に至るまで調査、研究、提言を行う。また、オリジナルツールの「人生ワゴン」を活用した「ライフデザイン講座」を開発・展開し、多くの若者に結婚、出産などを考えてもらう機会を提供。メディア取材、寄稿および講演多数。

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