経験なしから一歩踏み出した“初めて同士”のふたりTOKYO FUTARI

たんぽぽ・白鳥久美子さん(41歳) チェリー吉武さん(43歳) 長女(2歳) 長男(0歳)

お笑い芸人として活躍する白鳥久美子さんとチェリー吉武さん。ともに30代となっていたふたりは、お互いが人生で初めての交際相手。キスどころか恋人と手をつなぐことさえ未経験同士。何をするにも一歩踏み出すのに時間がかかったと言います。そんなふたりが、どのようにして結婚への歩みを進めていったのか伺いました。

交際経験ゼロ同士

はじまりは、ふたりが出演したお笑いイベント。久美子さんは、舞台裏でチェリーさんを見かけ、その肉体美に思わずウットリしたそうです。タイプ……、そう思った久美子さんですが、恋愛には奥手。素敵だとは思いつつも、自分から声をかけるといった行動には至りません。
 そんなある日、久美子さんはチェリーさんの所属する事務所の先輩と恋愛トークに。「誰か気になる人はいないの?」と聞かれて、思い浮かべたのはチェリーさんの筋肉質な身体。それを聞いた先輩はすぐにチェリーさんへ連絡。これをきっかけに、ふたりは連絡先を交換します。
 これまで誰ともお付き合いをしたことがないふたり。当然周囲は色めき立ち、関係を発展させるために、連絡を取るキッカケをつくったり、デートのお膳立てをしたりしていきます。そんな周囲の助けもあって、徐々に距離を縮めたふたりは、時間をかけながらも交際へと発展していきます。

恋愛対象に決まりは無い

そもそも奥手だった久美子さんが、なぜ恋愛に一歩踏み出すことができたのか? それはある憧れの人からの言葉があったから。
 過去に男性から容姿を揶揄された経験などから、自分に自信がなかった久美子さん。今の仕事をはじめた頃から「芸人に色恋は禁物」だと、自ら恋愛を遠ざけていたのだそうです。
 しかし、芸人に恋愛ご法度だと思っていたのに、徐々に周囲の芸人仲間からは恋愛トークが聞こえてくる。自分も恋愛してもいいのかも……そんな風に思い始めていた頃、久美子さんは以前から自分が大ファンだった漫画家さんと食事をする機会があり、そこで思いもよらぬ助言を受けます。
 「(久美子さんが)自分で稼いで、まだ売れていない夢追い人を支えていくのがいいんじゃない?」
 「女性は男性にリードしてもらうもの。いつか白馬の王子様が迎えに来てくれる」と、思っていた久美子さんでしたが、その時の会話をきっかけに、恋愛対象の視野が広がったそうです。
 視野が広がり、一歩踏み出せた久美子さんは、交際がはじまってからも久美子さんは積極的にリードしていきます。初めて手をつなぐのも、初めてキスをするのも、すべて久美子さんからの誘い。チェリーさんはまだまだ奥手。それは一歩踏み出すのが「怖かった」から。

高かった結婚へのハードル

当時のことを振り返って「プライドが高かったんだと思います」とチェリーさん。
 「もし手をつなぎたいと言って拒まれたら? キスをしたいと言って断られたら?」
 断られた時の決まりの悪さを考えると、なかなか一歩踏み出せない。自分の中にあるプライドが邪魔をしていく日々。だからこそ、チェリーさんは結婚への一歩なんて、考える余裕も無かったそうです。
 交際から3年すぎた頃、久美子さんが結婚を意識しているとチェリーさんは感じたそうです。「私が稼げばいいんだから」との久美子さんからの言葉にも「結婚=男が養うもの」と思っていたチェリーさんは、自分の収入がまだ満足いくものでなかったことから、一歩踏み出せずにいました。
 「交際から結婚へは、もう1段ハードルが高かったんです」(チェリーさん)
 しかし、進まない現状に久美子さんは業を煮やし「この先のことをどう考えている? 年齢的にも私にはリミットがあるから」と率直な思いをぶつけます。この時久美子さんは「もしこれを言っても駄目なら1年ぐらいで諦めて別れよう」と決意していたと言います。
 その場で答えを出せなかったチェリーさん。「(久美子さんに)言わせてしまったことが申し訳なかった」と当時を振り返ります。自分のプライドのせいで、大切な人を傷つけていると感じ、自問自答を繰り返す毎日だったそうです。
 そんな時、久美子さんが出演する生放送のテレビ番組から、チェリーさんにオファーが来ます。交際相手として何かサプライズが出来ないかとのオーダー。自分を変えたいと思っていたチェリーさんは、これこそがチャンスの時だと、リードされてばかりの日々に別れを告げ、番組内でプロポーズすることを決意します。
 「いつか結婚相手ができたら渡してほしい」と母から贈られていた指輪を手に、大勢が見守る中での結婚を申し込むチェリーさん。久美子さんの答えはイエス。あらたな一歩へ踏み出したこの日、ふたりは涙を流し喜びを分かち合いました。

一歩踏み出せた、誰かの「後押し」

結婚生活の中でわかったことは、側にいてくれることの大切さ。久美子さんは結婚するまで「ひとりで何でもできるタイプ」だと思っていました。しかし、新型コロナウイルスに感染し自宅療養となった時、動くことさえままならない久美子さんのために、チェリーさんは看病をしながら、家事などをすべてこなしてくれたそうです。そんな夫の姿を見て「支えてくれる存在がいることの大切さ」を感じた久美子さん。
 「収入については今も満足できるものになっていません。だけど、苦しくても、妻や子どもがいることで乗り切れるんです。どんな苦しいことも、家族といればすべて笑いになる」(チェリーさん)
 久美子さんは、独身時代に「結婚すると自由がなくなる、友だちが離れていく、仕事がなくなる……」と、さまざまな不安を感じていたそうです。しかし同じ子育て世代の友だちができたり、夫婦でテレビに出演したりと、不安をよそに新しい出会いや仕事が増えていく日々。自分にとって大切なものと思っていることが変わり「別のステージに移っただけ」と、久美子さんは不安だった過去が嘘みたいに、今の毎日が楽しいと言います。
 結婚について、「私たちは周りに助けてもらってばかりです」と久美子さん。思えば初めての連絡先交換も、告白も、誰かが背中を押してくれたから。初デートの時「チャンスを逃すな」と、芸人の先輩からダブルのスーツをプレゼントされたチェリーさん。「周囲の後押しがなければ、初めて同士のぼくたちは前に進めなかった」といいます。
 結婚することへの不安は多くの人が感じていることかもしれません。ふたりが一歩踏み出せたのは、周りの誰かが背中を押してくれたから。今度は、自分たちの言葉が誰かにとっての一歩踏み出すキッカケになれたら嬉しいとふたりは言います。
 30年後のふたりはどうなっていると思うかとの質問に「今と変わらず、(久美子さんに)怒られながら、楽しく過ごしていきたい。(僕らなら)笑って過ごせていると思う」とチェリーさん。
 「子育てが終わったら、また次のステージ。(チェリーさんと)ふたりの生活に戻って、付き合いはじめの頃のような時間がやってくるのかな。お互い好きなことをしながら、ありのままの“素朴”なふたりで過ごしていけたら」(久美子さん)

ふたりのQ&A

Q
出会いは?
A
ふたりが出演したイベントで久美子さんがチェリーさんに一目惚れ。その後、チェリーさんの所属事務所の先輩を通じて紹介してもらった。
Q
初デートは?
A
久美子さん行きつけの居酒屋でディナー
Q
結婚への道のりは?
A
約3年半の交際期間を経て、テレビ番組の生放送でチェリーさんがサプライズプロポーズし、結婚へ
Q
家族構成は?
A
長女(2歳)、長男(0歳)との4人暮らし
Q
家計と家事の分担は?
A
家計は久美子さんが使いみちなどを決定。料理は主に久美子さんが担当しつつ、その他は、気づいたほうがやるスタイルで半々ぐらいに分担
Q
休日の過ごし方・よく行く場所は?
A
子どもと一緒に遊べる場所へ出かけることが多い。
白鳥久美子(しらとり・くみこ)

白鳥久美子(しらとりくみこ)
1981年福島県生まれ。日本大学芸術学部卒。

2008年、川村エミコさんとのコンビ「たんぽぽ」を結成。2010年、人気バラエティ番組『めちゃ2イケてるッ!』(フジテレビ系)の公開オーディションでレギュラーの座をつかみ、一躍人気者に。コンビとしての活動に加え、テレビやラジオ、執筆活動など多方面で活躍。2021年に第1子、2023年10月に第2子を出産。2022年には、国家資格のひとつである保育士試験に合格するなど、活動の幅を広げている。

チェリー吉武(チェリーよしたけ)

チェリー吉武(チェリーよしたけ)
1980年10月13日生まれ。佐賀県出身。

多数のギネス世界記録を持っていることで知られている。2019年ニューズウィーク日本版では、「世界が尊敬する日本人100」に選ばれた。また「たんぽぽ白鳥&チェリー吉武 私たち、これで、家族やってます!!」のYouTubeでは動画もアップしている。

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