学生時代に結婚し
仕事、勉強、育児に奮闘するふたりTOKYO FUTARI

朝倉哲史さん (25歳)(仮名) 梨花さん (25歳)(仮名) 長女(4歳)長男(0歳)

大学で勉強を教え合ううちに親しく

 哲史さんと梨花さんは、大学で知り合いました。履修している授業がほとんど同じで顔を合わせる機会が多く、他の仲間も交えて勉強を教え合ったりノートを見せ合ったりするうちに親しくなり、1年生の秋に交際をスタートさせました。まだ10代の学生ではありましたが、ふたりは交際を深めるほど将来を意識するようになりました。
 3年生に進級したころ、ふたりに大きな転機が訪れました。梨花さんの妊娠がわかったのです。
「もともと、彼女と生涯一緒にいたいと決めていたので、結婚して子供を育てることに迷いはありませんでした」(哲史さん)
 戸惑いはありましたが、二人の心はすぐに決まりました。

ふたりの気持ちを繰り返し伝えることで、両親を説得

 すぐにそれぞれの親に報告しましたが、梨花さんの両親にはまだ学生である娘の妊娠をすぐには受け止めることができませんでした。
「僕にできることは、私たちふたりの気持ちや、親になる覚悟があることを伝えることだと思い、自分の言葉で一生懸命説明しました」(哲史さん)
 当初は持参した手土産も受け取ってもらえず、梨花さんの母親が泣き出してしまう場面もありました。それでも、繰り返し気持ちを伝えることでふたりの思いが伝わり、祝福してくれるようになりました。哲史さんは大学を辞めて働くことを覚悟していましたが、給付型の奨学金を得られたことで、なんとか卒業までふたりで暮らせるめどが立ちました。

周囲の助けを借り、育児・学業・就活を乗り切った

 育児と学業の両立は大変でしたが、周りの人に助けてもらいながら、乗り切ることができました。指導教員や同級生たちは、ふたりをサポートしようと、出産前後はレポート提出で単位を認めてくれたり、試験の時間に赤ちゃんを世話してくれたりしたそうです。梨花さんが、ほとんどの単位を出産前に取得しており、産後に取得しなければならない単位がわずかとなっていたことも幸いでした。
 結婚と出産という大きなイベントを経て、将来の進路やキャリアのスタートとなる就職活動の時期を迎えました。梨花さんは同じように学生結婚して親になった人たちのコミュニティに参加して、同じ境遇の学生が助け合って育児と学業、就職活動に励んでいる姿を見て、将来の不安が解消されていったといいます。
 ふたりは育児を分担し合い、就職活動に取り組みました。「夫の都合がつかなかった合同説明会には、赤ちゃん連れで行ったこともありました。企業の方は驚きながらも、授乳用に会議室を用意してくれたりして、とても親切にしていただきました」と梨花さんは振り返ります。
 ただ、梨花さんにはこれまでとは別の分野で、学びを深めたいという思いがありました。また、仕事よりも研究のほうが育児と両立しやすいと考え、迷った末に別の学部に学士入学して勉強を続けることにしました。

育児休業の夫に助けられ、妻は大学院を目指す

 翌春から認証保育所を利用し、梨花さんは大学に通いました。そして2年後に、第二子を出産。哲史さんは、1年間の育児休業を取得しました。哲史さんの会社は、同期入社の仲間でも子どもを持つ人もおり、男性社員の育休取得も多い環境で、上司や同僚は応援してくれたそうです。育休中である現在は、大学院を目指す梨花さんが勉強に集中できるよう、家事と育児の多くを担っています。
 学生という立場で結婚・出産したふたり。きっかけは妊娠ではありましたが、結果的に良い選択だったと感じているといいます。
「早いうちから、家庭という安心できる居場所を持てたメリットはとても大きいと感じています。就職3年目で1年間の育休はブランクかもしれませんが、キャリアは後からでも積むことはできます」(哲史さん)
 梨花さんは「結婚したことで、夫のサポートを受けてやりたい勉強を続けることができた。一人だったらそんな選択はできなかったかもしれない」と振り返ります。「子供の面倒をみてくれたり、遊び相手になってくれたりする仲間もいます。助けてもらいながら子育てしていることを実感しています」と梨花さんは言います。
 将来は専門分野を生かした仕事に就くのが夢だといいます。「同世代の人たちには着々とキャリアを積む人がいる一方で、留学したり私のように育児をしながら学ぶ人もいて、いろんな回り道があってもいいのかな、と思います」(梨花さん)

ふたりのQ&A

Q
家族構成は?
A
長女(4歳)、長男(0歳)と4人暮らし。
Q
出会いは?
A
大学で、同じ学科のクラスメートだった。
Q
初デートは?
A
授業の空きコマに、ふたりで自由が丘まで散歩した。
Q
結婚への道のりは?
A
大学3年で妊娠が発覚。結婚して子育てするという二人の気持ちはすぐ固まったが、両親の理解を得るのに苦労した。
Q
家計と家事の分担は?
A
妻は学生のため、生活費は夫が負担。家事は育休中の夫が主に担うが、仕事をしていたころは掃除・洗濯が主に夫、料理は妻が主に担当。
Q
よく行く場所、休日の過ごし方
A
近所にあるお気に入りのイタリアンレストランにランチ。近くの公園で子どもを遊ばせたりもする。夫の実家は都内、妻は埼玉なので、いずれかの実家に行くことも多い。

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