心地よい感覚を大切に。
海外移住経験をいかして東京のくらしを楽しむふたり。TOKYO FUTARI

細川誠さん(41歳)(仮名) 加奈さん(40歳)(仮名) 長女(5歳)

同級生の結婚式で再会

2人は中学・高校の同級生。当時ほぼ交流がなかった2人が再会したのは同級生の結婚式で、高校卒業から約10年後のことでした。これが運命の再会となりました。友人と複数で飲みに行くようになり、徐々に2人の距離は近づきます。付き合い始めた理由は、誠さんは「なんとなく+可愛かったから」、加奈さんは「なんとなく+自分とは異なり、物事を客観的に判断する視点にひかれたから」でした。
 しばらくして加奈さんは、持病が悪化し入院をすることになりました。そのため、初デートから数回、2人が会う場所は病院でした。病院デートについて、誠さんは「手ぶらで行き、数時間話して帰った」とあっさり振り返ります。加奈さんにとって、このデートは、病気や薬のことを調べてきてくれ、今後について一緒に考えてくれる誠さんの姿が心に残る、あたたかい思い出となりました。

海外移住と結婚を決意

交際開始から3年が経過し、同棲を始める話がきっかけで、以前から誠さんが行ってみたかったというイスタンブールに部屋を借りることにしました。イスタンブールを選んだ理由を、誠さんは「仏教が根付いた日本に生まれ、18歳からヨーロッパのキリスト教圏で7年暮らし、次はイスラム教文化に触れてみたかった」と語ります。
 当時、仕事を辞めたいと思っていた加奈さんは、「同棲してイスタンブールに住む」よりも「結婚してイスタンブールに移住する」という退職理由の方が会社へ説明しやすいと誠さんへ相談します。誠さんは、そんな加奈さんの事情を踏まえ、結婚していた方が何かと楽しそうと判断し、加奈さんからのプロポーズを快諾しました。移住に際しては、2人の両親もおおらかに見送ってくれました。

現地社会の一員になってゆく

イスタンブールで始めた結婚生活は、驚きと魅力に満ち溢れていました。食糧自給率が高いトルコでは、手軽に新鮮でおいしい食材が入手できます。日々の食生活が豊かなこと、それだけで幸福度が高くなると実感しました。他にも、人のあたたかさ、身近に感じられる歴史、様々な背景の人が暮らしている面白さ、船での通勤、生活の中に溶け込んでいる音楽や芸術など、暮らしの中にたくさんの刺激がありました。
 誠さんはフリーランスのデザイナーとしてのスキル、加奈さんは看護師資格を活かし、日本語で就労できる職に就きました。働く上で、日本人とトルコ人、それぞれの仕事に対する向き合い方の違いを感じたそうです。例えば日本人は問題が起こらないよう、綿密に計画を立てる傾向があるのに対し、トルコ人は「問題は起こった時に解決すればよい」と楽観的に考えることが多いそうです。そんな違いはありますが、誠さんが自らの経験を通して気付いた事は、最終的には、何かを成し遂げるために時間と労力をかける、仕事への思いは同じだということでした。
 移住して3年目、ご夫婦は長女を授かりました。病院での出産の際に、新しい命への喜びと感謝を表現する風習にも触れました。それは、病室の入口に赤ちゃんの名前を掲げて華やかに飾りつけ、部屋にはお祝いに来てくれた人たちへのお礼にお菓子を準備するというものです。誠さんと加奈さんも、装飾やお菓子を用意して、現地の風習に従いました。

海外移住の経験をいかして東京で暮らす

海外生活も4年が過ぎ、現地での生活に馴染んだ2人。それゆえに、今後日本に戻るきっかけがなくなってしまうのでは・・・という気持ちが芽生えます。2人の両親に孫の成長を見てもらいたいという思いもあり、このタイミングで帰国を決断、東京での暮らしがスタートします。
 誠さんは、変わらずフリーランスのデザイナーとして働いています。加奈さんは、主に妊婦さんへのサポートをする母子保健の仕事に就きました。東京での忙しい時間の流れ方に改めて驚きつつも、母子保健サービスや地域の施設の充実など、子育てがしやすい東京の環境に満足しています。
 2人にはイスタンブールでの生活を通して学んだことがあります。協力し合わないといけない状況の下で、お互いを尊重し、お互いに感謝できるようになったことや、まずは行動してみるということの大切さです。また、イスタンブールでの出会いや様々な経験が、仕事の面でも役立つものとなっています。

家族が大事にしていること、そしてこれから

家族のモットーは、目の前のことをちゃんと楽しむことと、円滑に生活できるよう、「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」を心がけていることです。
 仕事と子育てに奮闘しながら、たまにはそれぞれ1人で楽しむ時間もつくります。誠さんは月に1~2回のフットサルで汗を流し、加奈さんは手芸に没頭したり、時にはマッサージなどのリラクゼーションでゆっくりしたりすることもあります。
 今の生活に感謝しているという誠さん。2人になったからできるようになったこと、3人になったから見えた世界、1人では気付かなかった価値観が結婚により生まれました。その価値観は、デザインの仕事にも影響を与えてくれるそうです。加奈さんも、海外移住という貴重な体験をするチャンスをくれた誠さんへ感謝しています。
 現在、子育てが2人にとって最大のトピックです。七夕の短冊で、5歳になる長女の夢はパン屋さんになることと初めて知りました。さっそく家族でパン作りに挑戦するそうです。これからは3人で楽しみ、学び、寄り添いながら暮らしていきたい、そして、機会があればまたどこかの国で暮らしてみたいという目標もあたためています。

ふたりのQ&A

Q
出会いは?
A
元々は中学・高校の同級生でした。在学中はほとんど交流なく卒業し、約10年後に同級生の結婚式で再会しました。その後他の友人たちと一緒に飲みにいくようになりました。
Q
初デートは?
A
当時、妻が手術のため入院をしていたので、最初の数回は入院先の病院でした。
Q
結婚への道のりは?
A
付き合い始めて約3年、同棲を始める話になり、せっかくなので前から夫が行ってみたかったイスタンブールに住むことになりました。その話を機に妻からプロポーズし、結婚。入籍後1年弱は別居をしていましたが、2人でイスタンブールに移り一緒に生活を始めました。
Q
家族構成は?
A
長女(5)と夫婦の3人暮らし
Q
家計と家事の分担は?
A
共働き、家事への想いは夫婦で半々ですが、実際は妻がほとんど担い、夫の担当は娘の登園付き添いです。家計について特にルールはありませんが、大きな買い物をする際は夫の財布から。
Q
休日の過ごし方・よく行く場所は?
A
娘の習い事、近所の公園で娘の保育園仲間たちとゆったり。

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