ありのままの日常にたどり着いた横澤夏子さん
~100回の婚活パーティーを経験して~TOKYO FUTARI

横澤夏子さん(34歳) 夫・Aさん(35歳) 長女(4歳) 次女(3歳) 三女(1歳)

お笑い芸人として活躍する横澤夏子さんは、21歳から婚活を始めました。100回以上の婚活パーティーを経験し、時には疲れも感じながら、理想の結婚像を探し続けた夏子さん。現在は、3人の子どもに恵まれ、にぎやかな家庭を築いています。どのように今の日々へとつながったのか。お話を伺いました。

友人の結婚に背中を押されて

21歳の頃、新潟出身の夏子さんの周りでは、友人たちが次々と結婚していきました。特に一番の親友が結婚したことで、それまで“おままごと”のように感じていた結婚が、現実のものとして夏子さんの目の前に現れてきたのです。
 当時、東京で芸人としての活動を始めていた夏子さん。SNSには友人たちの結婚報告があふれ、根っからの負けず嫌いな性格もあって、次第に焦りを感じるようになりました。しかし、空っぽの家で「いい人がいない」とため息をつくだけでは何も変わらない。そう決意した夏子さんは、婚活パーティーへの参加を決めたのです。

すべての出会いが未来へのステップ

「今日は20人と話したかな…」。帰り道、夏子さんは疲れを感じながら指を折り数えました。婚活パーティーを重ねるごとに感じる消耗感。しかし、その疲れとじっくり向き合うことで、自分にとって何が大切なのかが見えてきたと言います。
 夏子さんは婚活への疲れを感じたときこそ、“自己理解を深めるチャンス”だと捉え直しました。どんなパーティーなら楽しめるのか、どんな人となら自然に話せるのか。一つひとつの経験から、自分の本当の望みを探っていったのです。
 そんな夏子さんの支えとなったのは、知人から教わった"人生の逆算"という考え方でした。自分の描く未来予想図に向かって、今の位置を確認しながら一歩ずつ進んでいく。たとえ合わない人に出会っても、それは目標に近づくための大切なステップの一つだと考えられるようになりました。
 「婚活は“人となり”を知る貴重な機会なんです。世の中にはこんな人もいるんだなって、視野が広がっていく感じがしました」
 また、婚活での出来事を笑い話として聞いてくれる友人の存在も、大きな支えでした。婚活疲れを感じそうになっても、「今日はこんな人に会ったの」「こんな大失敗しちゃったよ」なんて話をぜんぶ笑ってくれる。
 「友人が笑えば、それだけで婚活パーティに行った意味があったと思えたんです。今日のノルマ達成!だと」
 ひとりだと心が折れそうになるときも、その笑顔がすべてを包み込んでくれる。そんな支えとともに、夏子さんは目標へのステップをひとつ、またひとつと進めていきました。

「ちょうど面白くない」が心地よい

婚活を始めた頃の夏子さんは、身長や出身地、家族構成など、さまざまな条件にこだわっていました。転機となったのは「高身長の男性限定パーティー」での経験です。参加者と話しているうちに、身長は本質的な問題ではないことに気づいたのです。むしろ大切なのは、一緒にいる時間を自然と楽しめること。この気づきを機に、夏子さんの“理想”は少しずつ形を変えていきました。
 そんな時、後に夫となるAさんと出会います。同世代限定の婚活パーティーで、「ナナメ澤さん」と冗談めいて夏子さんのことを呼ぶ彼のことを、「ちょうど面白くない人」と感じたそうです。しかし、その飾らない空気感が、不思議と心地よく感じられました。これまでの婚活パーティーで感じていた緊張感が、彼との会話では自然と溶けていったのです。
 家が近所だったこともあり、仕事終わりにもよく飲みに行きました。まるで地元の同級生と話しているような、肩の力が抜けた時間。ありのままの自分でいられる心地よさを、夏子さんは強く感じたと言います。
 「この人と結婚できるかもしれない、なんて考えると緊張してしまうけれど、好きになれるかもしれないって思えたとき、余計なハードルが消えていったんです」

価値観の確認作業を積み重ね

3回目のデートで交際がスタートしたふたり。婚活パーティーがきっかけとはいえ、その頃には「結婚に憧れる」から、「あなたと結婚したい」へと変化していきました。
「結婚に憧れていた理由の一つは、約束しなくても一緒に夜ご飯を食べられる関係性でした。決まった時間じゃなくても、夜に一緒に食事をする。そんな何気ない“日常”を、彼と過ごしたいと思ったんです」
 ある日、デートの途中で立ち寄った家電量販店。「このサイズの冷蔵庫なら、子どもが2~3人いても大丈夫そうだね」と何げなく話す彼の言葉に、未来予想図が私と似ているなと感じた夏子さん。改まって話し合わなくても、日々の会話の中で自然と価値観の確認ができていったことが、ふたりの関係をより確かなものにしていったのです。
 結婚を意識しながらも、なかなかプロポーズしてくれない彼に対し、夏子さんは結婚式場巡りを提案します。式場スタッフの力も借りながら、結婚後の生活をより具体的にイメージしていったふたり。結婚式場を予約した帰り道、夏子さんから「プロポーズしてもらっていいですか?」と切り出し、正式な婚約へと進むことになり、夫婦となりました。

ありのままの自分がいる日常へ

現在、3人の子どもたちの育児と家事を分担しながら過ごすふたり。結婚前、夏子さんが思い描いていたのは、朝、まな板がトントンと響き、その音で目覚める夫……そんなドラマのようなワンシーン。でも、実際に手に入れた幸せは、もっと等身大のものでした。家族で公園に出かけ、子どもたちと遊ぶ時間。夜、自然と集まる食卓でのだんらん。そんな何気ない日常の中に、想像以上の幸せを見いだしていったと言います。
 「婚活中は、今の暮らしなんて想像もできていませんでした。やっぱりイケメンがいいなって思っていたし。でも、一緒にいて疲れない、この人となら安心できる。そういうことこそが本当に大切だったんです。夫とは、本当に疲れないし、心から安心できるんです」
 夏子さんは、婚活は「自分と向き合う時間だった」と振り返ります。相手を選ぶ時間ではなく、自分にとって何が大切なのかを見つめ直すチャンス。苦しい時期もありましたが、それを乗り越えてきた夏子さんは、“ありのままの自分でいられる日常”という、本当の理想にたどり着きました。

ふたりのQ&A

Q
出会いは?
A
同世代限定の婚活パーティー
Q
初デートは?
A
彼の行きつけの居酒屋
Q
結婚への道のりは?
A
3回目のデートで正式にお付き合い。式場巡りの帰りに夏子さんからプロポーズを迫り婚約
Q
家族構成は?
A
3人の娘と5人暮らし
Q
家計と家事の分担は?
A
家事育児はお互いに分担。家計は同じ口座に同額を入れて運用
Q
休日の過ごし方・よく行く場所は?
A
家族で近所の公園へ。3人のお子さんと一緒にのびのびと過ごす
横澤夏子(よこさわ・なつこ)

横澤夏子(よこさわ・なつこ)。
1990年生まれ。新潟県出身のピン芸人。高校卒業後、吉本興業の養成所であるNSC東京校に第15期生として入学。一人芸で誰が一番おもしろいかを決める大会である「R-1ぐらんぷり」では2016年から2年連続で決勝に進出。「女芸人No.1決定戦 THE W」では2018年に準優勝。また、2023年冬に開催された「ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ」にて優勝。プライベートでは2017年に一般男性と結婚し、現在は3人の子どもを育てている。『夫が寝たあとに』(テレビ朝日)では藤本美貴とダブルMCを務める。

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