東京ふたり応援会議
「全国結婚支援セミナー in 東京」
2日目
~11月11日(月)~

2日目は、全国各地で地域の特色を活かしながら取り組まれている、様々な結婚支援の事例を発表いただきました。

○福井県:地域と密着してお寺が縁結びに一役

・高野山真言宗深山飯盛寺副住職 杉本 成範

 杉本さんは、日本有数の寺院密集地帯の福井県小浜市にある飯盛寺で、副住職をされています。
 結婚支援の取組を始めたのは昨年度で、そのきっかけは檀家の方から受けた、「檀家の減少や地域の高齢者の増加に伴い、お寺に対する奉仕作業を継続するのが難しくなってきている」というご相談でした。杉本さんは、それ以前から、住職の後継者不足やご先祖様との向き合い方の変化によって檀家とのつながりが弱まってきていることなど、お寺の置かれている状況について、危機感を感じていました。檀家だからという理由だけでお寺を支えてもらうのではなく、お寺や住職のファンになってもらい、支えたいと思ってもらえるような関係にシフトすることが必要だと考えたそうです。
 そこで、まずお寺を知ってもらう、親しんでもらうことが大事だと考え、お寺で婚活イベントを開催することにしました。地域のボランティアとして結婚を応援する「地域の縁結びさん」として、県のサポートも受けながら、お寺同士で連携しながら活動をしているそうです。
 「今はまだ始めたばかりのため、試行錯誤だが、SNSも活用しながら多くの方がお寺に触れる機会をつくっていきたい。私達だけではなく、お寺は皆、やり方がわからないだけだったりする。自治体の皆さんも、お寺の活用やイベントの開催を地域の寺院に働きかけてみると、新たな支援活動につながるかもしれない」とお話しいただきました。
 この翌週には、飯盛寺の広大な境内を使って、非日常的な空間の中で地図を頼りにチェックポイントを探しながら、見本と同じ写真を撮っていくフォトロゲによる婚活イベントを開催するそうです。

○兵庫県:「神戸で愛を育みませんか?」で住宅支援を広報した結果とは

・兵庫県神戸市建築住宅局住宅政策課住宅支援係長 向井 久雄

 向井さんからは、内閣府の補助制度「結婚新生活支援事業」を活用した神戸市の新婚世帯の住み替え支援施策についてお話しいただきました。
 神戸市の結婚新生活支援事業は、世帯合計所得340万円未満の新婚世帯が、補助を利用して少しでも良好な住宅に住めるよう、家賃・住宅取得費・敷金・礼金・共益費・引っ越し費用などを上限30万円まで補助する事業です。
 施策の背景には、神戸市の人口減少があるそうです。市の人口は平成23年の154万人をピークに減少し、現在は152万4,000人まで下がってきていると言います。この低下を少しでも食い止めるための住宅政策の一環として、結婚新生活支援事業を実施しているとのことです。
 神戸市では、この他にも、結婚、出産、子供の就学など、ライフステージが変わり、住宅の住み替えを検討する際に神戸に目を向けてもらうため、数多くの住み替え支援補助事業を展開しているそうです。
 最終的な目標は、「神戸の魅力をいっぱい発信していくこと。定住はしなかったとしても、旅行で訪問してもらうのでもいい。とにかく、神戸のことを知ってもらうことが一番大事」と語ります。
 神戸の魅力をより効果的に発信するため、向井さんは事業の広報にも力を入れており、事業の周知動画をデザイン系大学の生徒さんに作成依頼したり、問い合わせ件数やネットのアクセス数を分析することによってターゲットに応じたツールを選択するなど広告媒体の効果検証を実施したりして、日々改善に努めているそうです。

○長野県:結婚登録者の個性を生かす「個人の魅力発見型イベント」

・いなし出会いサポートセンター相談員 八幡 善弘

 八幡さんは、伊那市を退職し、大学で心理学を学んだ後、いなし出会いサポートセンターの相談員になりました。市の職員の時にも4年間結婚支援事業に携わり、その当時から結婚支援の仕事に魅力を感じていたそうです。心理学を学んだのは、相談員として従事するには、相談に来た人の話を聞き、その人の持っているものが何かを発見する力をつける必要があると考えたからだそうです。
 八幡さんは、心理学で学習したことを活用し、センター登録者の好きなことや得意なことに着目し、登録者を主役にするイベントを開催しています。その例として、スコップ三味線が得意な方のコンサートやパワースポットでドローンを飛ばすイベント、本好きを集め1人1冊本を紹介する夜の図書館ミステリーツアーなどを紹介されました。
 「登録者の方には、おとなしい人が多く、なかなかイベントに来られない、または来ても上手く話すことができずに終わってしまう方が多い。しかしながら、得意なことを披露してもらう形を取ると、その方の魅力が発揮され出会いにつながる。また、出会いにつながらなかったとしても、その人の自信につながる」と話しました。さらに、「登録者がそれぞれ持っている力を発見するのが相談員の役目。もしそれができれば、イベントは成功する」と話されました。
 最近では、『面白いことをしている人がいるよ、あそこへ行くと幸せになれるよ』といった口コミが広がって、女性登録者数が増加するなど、取組の反響が広がっているとのことです。また、以前はサポートセンターでの出会いは内緒にする場合が多かったのに、結婚が決まった登録者が、結婚式で流すからといってセンターに映像を撮りに来たりもしてくれるそうです。
 最後に、「結婚に対する価値観が変わっても、未婚者が抱える悩みは変わらないと思う」と語り、「未婚者に寄り添って、これからも支えていけば、きっといい方向に向かっていくと私はいつも思っています」と話されました。

○福島県:企業と連携~5年間の活動経過とこれから

・福島県いわき市市民協働部地域振興課地域振興係 鎌田 温子

 いわき市では、セミナーや交流イベントなど、福島県とも連携しながら様々な取組を行っているとのことですが、今回、鎌田さんからは、いわき市結婚サポーター制度についてお話しいただきました。
 いわき市では、市内の企業や団体に、市と一緒に結婚を望む独身者を応援していただく「結婚サポーター」を配置し、希望する独身者に、他企業・団体のサポーターを通じて出会いの場を提供しているそうです。
 結婚サポーター制度を始めた理由は、市が実施した結婚に関する意識調査において、出会いの場として多く回答があったのが職場だったこと、また、職場は生活をする上で多くの方が所属している場所であることから、企業内に結婚サポーターがいるのが一番効果的に結婚支援を行えるのではないかと考えたからだそうです。
 市では、サポーターが結婚支援のノウハウを学びつつ、横のつながりをつくる場として過去2年間、サポーター交流会を開催してきました。年に2回程度サポーターが集まり、活動の中で抱える課題を議論する小グループのディスカッションや結婚支援に関する勉強会などを実施していたそうです。また、今年度からは実際に集まることが難しいサポーターに向け、市の事業の成果報告やサポーター活動に役立つ情報をメールマガジンで月1、2回配信しています。
 企業等の状況も様々なので、それぞれの環境に応じて、例えばマッチングまでは難しいという企業でも市の事業の周知などで協力を得るなど、できる範囲での協力をお願いしているそうです。
 「最終的には、市内の全ての企業に結婚支援事業のサポーターになってもらい、市が結婚支援に取り組んでいることを知らないという人を一人でも減らすように頑張っていきたい」と話されました。

○閉会の挨拶

・全国地域結婚支援センター理事 山田 昌弘

 山田理事は、閉会にあたり、「婚活」という言葉を作った12年前に比べ、結婚を取り巻く環境が大きく変わり、支援のあり方も転機を迎えていると話しました。
 今は、公的支援を始めた当初のように、マッチングや出会いの場を提供していれば一定数が結ばれていくという状況ではなく、それだけではうまくいかない人や、支援を求めに来てくれない方々にどうアプローチしていくかが課題となっている、と言います。この課題解決のためには、発表された方々のように様々な工夫を凝らし、またマッチングするだけでなく、付き合った後のサポートもしなければならない時代になってきている、と話しました。
 また、SNSが若者のコミュニケーションパターンを変化させたことにも触れ、出会いや結婚にコストパフォーマンスを求める若者たちにアプローチするには、SNSを活用したり、バーチャルな出会いの場を設けたりするなど、これまでとは違った支援の仕方が必要になってきている、と挨拶し、閉会しました。

 2日目の午後には、都道府県の結婚支援担当者による会議を開催し、各自治体における課題や実施している様々な施策について議論しました。