東京ふたり応援会議
「全国結婚支援セミナー in 東京」
1日目〈Part 1〉
~11月10日(日)~

若い世代の思考と行動に迫った第1日目の様子をレポートします。

○主催者挨拶

・東京都知事 小池百合子

 小池知事は、冒頭、それぞれの地域でちょっと背中を後押しすることで新しい家族ができる、そのような取組を、力を合わせて進めていく必要があると述べ、都としても「いつか結婚したいけれどもなかなか一歩踏み出せない人」を後押しするため、結婚支援ポータルサイト『TOKYOふたりSTORY』を開設し、総合的な情報発信を行っていると紹介しました。また、船で東京の島々を訪れる婚活ツアーへの支援や民間企業との連携による都庁展望室での婚活イベントなど、出会いの機会を提供するため幅広く取り組んでいると話し、多くの方々が求めている出会いの機会を提供する取組を、都も後押ししていきたいと語りました。
 最後に、日本の将来を考え、この令和の新しい時代の新しい家族像なども皆さんとともに描いていくことで、物質的だけでなくて精神的な豊かさも感じられるような街・人作りを進めていきたいと挨拶しました。

・NPO法人全国地域結婚支援センター 代表理事 板本 洋子

 板本代表は、はじめに、結婚支援事業については成果や効果が見えづらいが、今回のセミナーに集まった最前線にいる皆さんは、これまで懸命に取り組んできていると話しました。
 そうした中、今回の会議を「若い世代」に焦点を当てた意図について、結婚支援をしていると、地域の未来を若い人に託したいとの思いから、もっと若者の意識を変化させようという話がちらほら聞こえてくるが、若者を変えるというより、私たちが持ち合わせている固定観念や価値観を見直すことが重要な時期にきたのではないだろうかと話しました。
 また、結婚しない、あるいはできないその背景も理解することで、ものごとを平面的に見るのではなく、立体的に見なければならないと語りました。
 最後に、今回の会議は、今の若者に私たちも寄り添ってみる、若者の問題を基軸にしながら支援者同士で交流し、色々と学ぶことで、自分達が持っている固定観念をもう一回問い直す、支援者自身も何かに気づいていく、そういう機会にしていただきたいと挨拶しました。

○【講演】「未婚化・晩婚化する若者をどう理解し、応援すればいい?」
原田曜平氏 (若者研究家・マーケティングアナリスト)

原田さんには、未婚化、晩婚化する若者、多様化する若者の生き方についてお話しいただきました。

■ここ10数年で、若者の価値観や生き方に大きな変化が生じている。

 10年ほど前から、流行語大賞において、現代の若者を表す言葉がノミネートされるようになりました。現代の若者はスマホに依存し、お酒を飲まなくなり、車を買わなくなりました。恋愛においては草食男子化が進み、恋愛番組においても、10数年前は男性が女性に告白するのが当たり前でしたが、現在は女性から男性へ告白するパターンがほとんどです。男性は積極的に女性を誘うことは少なくなり、また「オトメン」(乙女のような男子)と呼ばれる男性が増えたように、恋愛は「男から誘うもの」ではなくなりました。このように恋愛のスタイルも10数年で大きく変化しています。

■ゆとり世代と呼ばれる世代

 彼らを理解するためには、彼らが育ってきた時代背景を理解する必要があります。主に「ゆとり世代」と呼ばれる20代の若者は、生まれてからずっと不景気の時代を生きてきており、バブル景気を知りません。バブルのことを親から聞いたり、テレビや映画で目にしたりすることはあっても、バブル時代の社会全体が上昇していく感覚を肌で感じたことは無いので、団塊世代をはじめとする上の世代の人達とは、「景気」や「お金」に対する感覚が大きく異なります。
 例えばバブル世代の方々は、お金は使っても後で返ってくる、若いうちは経験のためにお金を使うべきだという感覚を持っていますが、ゆとり世代と呼ばれる人達は、不景気を前提としており、使った分のお金がいずれ戻ってくるという感覚は持っていません。それどころか、下手したら、経済事情はどんどん悪くなっていくとさえ思っています。
 なぜ、このような感覚を持つのか。それは、これまでの不景気により彼らの親世代の平均収入が大きく減っており、ゆとり世代はその影響を直に受けているからです。また、奨学金を受けている学生の比率も50%を超える高い数値になっていて、社会に出るときに、200万から300万借金をしていれば、消費意欲も減るでしょうし、結婚に対しても何となく不安になるだろう、と思います。
 ここ数年、就職状況は非常によくなり、学生の就職への心配は和らいではいるものの、こうした時代背景から、長期的な未来に対する不安感を根底として持ち、何となく身の回りに夢や希望が少ないと感じ、安定した生活を欲する20代が増えているのです。
 「なぜ結婚に臆病になるの?まずは一歩踏み出してみれば。」そんな考えは、バブル世代の感覚であることがわかると思います。

■携帯電話・SNSの普及がもたらした変化

 30代前半より下の年代は、小さい頃から携帯電話を持って生きてきた人です。スマートフォンを持つと、ほとんどの人は無料通話アプリをインストールしSNSを使い始めますので、学校外でも友達と常時連絡が取れる状態になります。これにより、仲のいい人だけではなく、あまり親しくない人の情報も筒抜けで入ってくるようになるのです。この状態が若者の人間関係に次の3つの変化をもたらしました。

①空気を読む
 昔は、中学、高校、職場など、いわば同じ環境にいるときだけ関係が構築されるパターンが多かったのですが、現代のSNSでつながっている人間関係は携帯電話さえあれば成立するので、環境が変わっても過去の人間関係が継続する傾向が強くなりました。
 結果、こうして築かれた広いネットワークの影響により、何か目立ったことをするとすぐに友達の友達といった会ったことのない人にまで、情報が共有されてしまう環境が作り出されました。そして、今の若い人達は、悪評が立つことを避けるため、「空気を読む」ことと、友人や同僚などの横社会の気遣いを過剰なほどするようになりました。
 一方で、上司を立てる、お酒の席で上司や先輩にお酒を注いだりするなどといった、目上の人などの縦社会に対する気遣いは弱くなっています。
 つまり、上の世代が若者に受け入れられようとするなら、この「空気を読む」お友達感覚・横社会の感覚を身に着けることが有効です。また、前述のとおり、彼らはある種の同調圧力の中を生きてきており、すぐに本音は話してはくれません。若者の本音を引き出すには、表面上の回答を鵜呑みにせず、掘り下げを行うなどの工夫が必要です。

②恋人を監視する?!
 SNSの普及により、個人の情報はインターネットで検索すると容易にわかるようになった現代では、付き合っている人の日々の行動(今、誰と、どこで、何をしているか)まで、簡単に調べることが出来てしまいます。自分と会っていない時の恋人の行動を調べ、ついつい相手を束縛してしまう、こんな事象が見られるようになりました。また、それを見ている恋愛をしていない子たちが、カップルになると面倒だ、と感じ恋愛から離れていく負のスパイラルも生まれています。

③既視感~体験した気になる~
 また、SNSのみならず、情報の普及により、自らが経験したことの無いことをあたかも経験したことがあるように感じてしまう、いわゆる既視感を感じることが増えたとも言われています。
 例えば、旅行においては、現代ではインターネットで調べればすぐに行きたい場所の情報が得られるため、あたかもそこへ自分が行ったことがあるかのような感覚に捉われてしまうのです。結果として、行動力や好奇心が削がれ、実際には旅行しない、ということになったりします。

■価値観の変化と、それに伴う市場の変化

 物に対する価値観も大きく変化しています。日本市場は消費者の目が厳しいので、長く続くデフレの中で、物の値段が下がっても質は下がらない、それどころか質が上がるという世界的に見て異常な市場が築かれました。これにより、昔の「安かろう悪かろう」から「安かろう、そこそこ良かろう」という市場があらゆるジャンルにおいて出来上がっているのです。
 昔の日本人は、高い物を購入し、所持することをステータスとする傾向にありましたが、現代の若い人達は、物そのものではなく、良いものを安く購入出来る自分の人脈や、安くても良い品物だと判断出来る自分の目利きの良さなど、自分自身を自慢したい、承認されたいという欲求を強く持っています。
 また、最近の若者は、昔流行ったものにまた夢中になる、いわゆる懐古厨と呼ばれる人も増えています。子供の頃に使っていたものを大人になっても使うことを恥ずかしいとは思わず、エコの観点から一つの物を長く使うことが格好いいと思う子もいます。彼らは、戦後の日本のようにライフステージ毎に所有物を買い換え、ステップアップしていくという感覚は持っていません。この点を鑑みると、「もういい年なんだから結婚すべき」という年齢に応じた行動を求めるのは、若者の感覚からすると少しズレた発想かもしれないことがわかると思います。

■SNSを結婚支援に活用する

 最近では料理の画像をSNSに載せる若者が増えており、料理をすることに対するイメージがおしゃれやクールと捉えられるようになっています。結婚も同様にSNSを通じてイメージを変えることが出来れば、結婚したいと思う若者が増えるかもしれません。ネガティブな部分も大きく取り上げられるSNSですが、活用の仕方によっては、若者の心を掴むのに大いに役立つツールとなるかもしれません。