自分の幸せを自分でデザインするライフキャリア術

長い人生、さまざまな選択肢がある中で、どんな道を選べばよいのか不安に感じている方も多いのではないでしょうか。そこで、全国の高校や大学でライフキャリア講座を行っている相模女子大学客員教授の白河桃子さんに、自分で選択を行うために知っておいて欲しいライフキャリアの基礎知識を聞きました。

白河 桃子/相模女子大学客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員、内閣府男女局「男女共同参画会議専門調査会」専門委員などを務める。東京生まれ。慶応義塾大学文学部卒業後、住友商事などを経て執筆活動に入る。働き方改革、ダイバーシティ、女性活躍、ワーク・ライフ・バランス、自律的キャリア形成、SDGsとダイバーシティ経営などをテーマとする。著書に『後悔しない「産む」×「働く」』(齊藤英和氏と共著、ポプラ新書)、『ハラスメントの境界線 セクハラ・パワハラに戸惑う男たち』(中公新書ラクレ)など25冊以上がある。

ライフコースは多様化し、人生の選択の幅は広がった

私はこれまで、数多くの高校生や大学生に向けて、ライフキャリアに関する講座を行ってきました。なぜなら彼らは親世代とは全く違う未来を歩むことになるからです。親世代が若いころは、「学校を卒業したら就職し、結婚し、子供を持ち、マイホームを買い、定年退職する」といった、多くの人がたどる典型的なライフコースがあったものです。しかし今は多様な選択肢があり、どんな風にどんな道を歩むかはその人、本人が決める時代になりました。

人生における初期の大きなイベントは、主に3つあります。第一に仕事、第二にパートナーシップ、そして第三が子育てです。仕事に関しては、新卒で就職した会社で定年まで勤めあげるという終身雇用はもはや当たり前ではなくなり、働き方は多様化しています。女性に関しては「正社員のうち第一子出産後の就業継続率は7割」になりました。今後はフルタイム共働きのカップルが当たり前になるでしょう。パートナーシップの在り方も入籍を伴う男女間の結婚だけでなく、事実婚を選んだり、同性をパートナーとする人もいます。子育てに関しても、ひとり親家庭も多く、里親、養子縁組といった形もあります。パートナー、子供を持たないという選択肢もあります。

選択肢が大きく広がった一方で、周りがお膳立てしてくれたライフコースを歩む時代は終わり、欲しいものは自分で取りに行く時代になりました。皆が同じような時期に同じライフイベントを迎える一律の人生ではなく、自分はどんな人生を望むのか、主体的に考えて選択し行動することが必要です。

待っているだけでは手に入らないものがある

多くの学生は、卒業した後の職を得るため「就活」をするでしょう。待っているだけで意中の企業からスカウトされるようなことはあまりないので、どんな仕事をしたいかを考え、企業研究をしたりエントリーしたりといった活動が必要になるからです。

これは結婚や出産・育児でも同じです。だれにでも「結婚しない自由」や「子供を持たない自由」がある一方で、パートナーが欲しいとか、結婚したい、子供を産みたい・育てたいと望む人が、望んだだけでその願いを叶えられるかといえば、そうとはいえません。

ある民間の調査によると、「恋愛では相手のアプローチを待つ方だ」と答えた未婚者は、男性で6割、女性では7割以上いました。仮にどこかで男女が出会って好印象を抱いても、お互いがこうした受け身の姿勢では何も起きません。理想の人から交際や結婚を申しこまれるのをただ受け身で待っているのではなく、気になる人には積極的にアプローチしないと、誰もお世話をしてくれないし、何も起こらないわけです。

後悔のない人生を送るには、自分の幸せを自分でデザインし、獲得するために行動することが必要になっているのです。

男女を問わず影響がある、年齢と妊娠の関係

ライフキャリアには、正しい知識を持った上での選択が必要です。子供を望まない時と望む時、両方の知識です。特に不妊に関する知識は大事です。例えば「男性ならいくつになっても子供は持てる」といった誤った認識を頼りに妊娠出産を先送りにすると、「もっと正しい知識を持っておくべきだった」と後悔することになりかねません。

妊娠率は男女とも20代前半がピークで、20代後半から次第に低下していきます。女性の場合、卵巣に残っている卵子の数を反映するAMHというホルモンは平均値、中央値(すべての数値を小さい順に並べた時に、ちょうど真ん中にくる数値)共に若いほど高く、年齢を重ねると減っていき、50代ぐらいで閉経となります。あくまで数なので、質の値ではないのですが、調べると「自分の卵子の数が年齢平均に比べどうなのか?」の参考になります。注意したいのは、この値は個人によるばらつきが大きく、値が高い人と低い人の差が大きいことです。25歳でも50歳の平均値に近い人もいれば、40歳を過ぎても30代前半の平均値程度の値を示す人もいます。つまり、40代で出産した有名人が何人もいるからといって、自分にもそうしたケースがあてはまるとは限らないし、20代だから大丈夫という訳でもない。現在40代での出産は全体の子供数の5%程度となっています。

男性についても、パートナーの女性を妊娠させる力は年齢とともに低下していくことがわかっています。卵子の老化と同じように男性には精子の劣化があり、40代にはその兆候が現れています。また、流産、先天異常の確率も、男性の年齢が高くなるほど上がります。不妊も男性が原因とされるものが5割です。女性だけでなく男性も、子供を望む人は、知識を持ち、判断していくことが大切です。

キャリア、家事、育児は社会も巻き込んでシェアしよう

パートナーがいても、仕事か家庭かの二択を迫られたり、自分の収入だけで家族を養わなければならないと考えてしまうと、なかなか同棲や結婚、そして子供を持つことを決断できないこともあるでしょう。

そこで、キャリアや収入源、家事、育児などをどちらか一方の役割とするのではなく、互いに補完し合い、社会も巻き込んでシェアする「チーム育児、チーム稼ぎ」をおすすめしています。特に育児に関しては、二人だけで抱え込まず、パパ友、ママ友、行政の支援策、ベビーシッターや家事代行など、得られるサポートをフル活用してシェアするのが望ましいです。チーム育児、チーム稼ぎは失業や病気、離婚といった事態が起こったときの経済的なリスクを回避することにもつながり、人生の自由度や充実度が高まります。

ライフキャリアは何度でも修正していい

思い描く人生を歩むためには、ライフキャリアプランの節目節目を描くことが、おすすめです。しかし、すべて計画通りには進みません。中にはパートナーとの別れを経験する人もいるでしょうし、一生の仕事と決めた職があっても転勤する人を好きになってしまったり・・・人生は予期せぬことの連続であり、予定通りにはいかないものです。キャリアの8割は偶発的なことで決まると言われています。

重要なのは、デザイン通りにいかなかったことを嘆くのではなく、予期せぬハプニングもポジティブに受け止めて、サーフィンのようにイベントの波を乗りこなすことです。人生において、渦中にいる時はつらく悲しい出来事であっても、長い目で見れば大きなチャンスだったり、良い方向への転換点だったということは、よくあることです。

ライフキャリアプランは一度決めたことにとらわれず、柔軟に修正や変更することが変化の早い時代には大事です。絶対に譲れないものと、柔軟に対応できるものを分けて考え、臨機応変に変えていけばいいのです。自分にとっての幸せをデザインしてみてください。

良かったら、本ポータルサイトのライフデザインツール
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